昨日の立川志らくの独演会、おもしろかった。
最初の演目は”あくび指南”。わざわざあくびを習って稽古するっていう滑稽話。志らく曰く『これぞ落語でしかできない、小説や映画ではできないくらいくだらない噺』。確かに。でもサゲもきれいで、初っ端の演目としてはいい感じ。
次の演目は”三枚起請”。これはドラマ”タイガー&ドラゴン”で観た演目。吉原のねえさんが身請けの約束をしたためた起請文を三枚も書いていたことが御三方にバレてしまうという噺。サゲまで聴いて「あれ?こんなだったっけ?」と思い、休憩に入ったので携帯でピポパと調べてみた。そしたらやっぱり一般的なサゲとは違ってアレンジがしてあった。
休憩後、最初に”三枚起請”のサゲの話から始まった。通常のサゲだと意味がわかりにくいから変えちゃったそうで、なるほど納得。でもって最後の演目は志らくオリジナルのシネマ落語。映画好きの彼が名作映画の舞台を江戸に変えて落語に仕立て上げた噺。今回はジェームス・ディーン主演の名作、”エデンの東”。
これがすーっごくよかった。今年の上半期に寄席でかかった全ての落語の中で一番良かったと評価された演目だそうで、観る前は「へぇ~。」くらいのものだったが観て納得。すばらしかった。
なんと前の二つの演目、”あくび指南”と”三枚起請”がネタ振りや序章として機能していて、この”エデンの東”できっちり物語が繋がってしかも大団円で終了というカタルシス全開の壮大な落語絵巻。構成のうまさにしてやられた。そして最後はちょっと泣けてしまった。父子ものはほんとヤバい。ツボすぎる。
と、噺はどれもおもしろくおかしくうまかった。(あ、女の人の演じ方だけがちょっと・・・って感じだったな。)しかしながらそこは立川流。ただおもしろいだけじゃなく、しかも本人曰く師匠談志の【キチガイ】の部分を引き継いだとあって、枕で話すことの毒気たっぷりなこと。誹謗中傷悪口に物真似、舞台だからこそできる話がわんさかだった。これもまた志らくの魅力なりと思いけり。
全てが終わって頭の中にピカーン!と閃いたのは、最初の”あくび指南”の枕で引用された師匠談志の『落語とは?』への回答。
『落語とは、人間の業の肯定である。』
まさにその通りの立川志らく独演会の三演目。けだし名言なり。ごきげんよう。