北野武監督、脚本、編集、”アウトレイジ”。
シマの取り合い、シノギの奪い合い、敵、味方、どちらとも騙し合い。出てくるのはみんな悪党の北野武監督原点回帰のザ・ヤクザな群像劇。
三浦友和、椎名桔平、加瀬亮など、おおよそヤクザらしくない俳優がヤクザで、しかもみんながみんな腹に一物も二物も三物も持っており、騙したり裏切ったりのオンパレード。しかもヤクザ社会のヒエラルキーが三層に渡っているため、敵対するヤクザとの関係やそれぞれの利害関係がとても複雑。小悪党から大悪党までの中で、最終的に誰が一番得をするのか?のしあがれるのか?が叙事詩的に描かれる。
溜めて溜めて溜め込んで撃つために暴発しまくりの物語は、常に緊張感、緊迫感を持っており、最後までハラハラドキドキしっ放しである。そして相関図が複雑で、進行する構成が全く読めない。
誰と誰がこういう関係で、こことここが敵対しているからこうなって、結果こいつが得をして、でも実はあいつが裏にいて・・・ってのが、すごく計算され尽くされていて落とし所がビタビタッとキマッている。物語に破綻がない。
難解なパズルをひらめきではなく理論でもって解き明かしていくような、そんな映画。ビートたけしは数学がすごく好きで得意だったことを思い出す。
ヤクザをモチーフにした暴力映画という点では原点回帰かもしれないが、緻密な数学的映画という点では明らかにネクストステージに立っている。
”アウトレイジ”★★★★