それなら【ズ】を取って【放課後ボーイ】でいいんじゃないのか?という声が聞こえそうだけど、それはなんか違う。
帰り道にラーメンでも食べて帰ろうかと思ったものの、お目当てのラーメン屋が閉まっていた。
またこの先のラッキーが1コ増えたと思いながら踵を返したら、ぼんやり灯るすすけた看板が目に入った。【お食事処】と書いてあるその看板に惹かれたが、いかんせんこんな時間にこんなところで飛び込むのは勇気がいる。取りあえず引き戸が開いていたので前を通ってみた。座敷とカウンターにお客さんがいるみたいだ。ちょっと逡巡したが、ええいままよ!と飛び込んだ。
中はお世辞にもキレイとは言えない。でも懐かしい感じで心地いい。
カウンターに座って瓶ビールと名物って書いてある地鶏焼きを頼んだ。多分夫婦だろう年老いたおじちゃんとおばちゃん。おじちゃんは完全に酔っていてスローモーション。対照的におばちゃんはこまごまと働いている。
おばちゃんが地鶏を焼いていて、おじちゃんはテレビを眺めている。
おばちゃんが地鶏焼きを持って来た。結構ボリュームがある。一口食べたら思いのほかうまかった。
洗い物まで終えて手が空いたおばちゃんが話しかけてきた。『うちは初めて?』
こっから俺のすっげえハッピーな夜が始まった。今までに貯まったラッキーが全て清算されたんじゃないかというくらいハッピーな夜が。涙が出そうになるくらいハッピーな夜が。
俺の大好きなヤツらとしか行きたくない、大好きな人にしか教えたくない、そんな店。
天文館は狭いようで広い。つーか、深い。
今日もまた行くか。