クリント・イーストウッド監督、”インビクタス 負けざる者たち”
去年の”チェンジリング”、”グラン・トリノ”の2連発を観てしまったら、今、イーストウッド監督作品を観ないわけにはいかない。そしてその大き過ぎた期待は微塵も裏切られなかった。
南アフリカ共和国にて初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ。彼は黒人と白人が対立する国を一つにするための策を思いつく。それは翌年、同国で開催されるラグビーのワールドカップにおいて優勝することだった。彼はチームの主将をお茶に招いた・・・。
30年近い投獄生活の末に解放され、同国初の全国民での選挙を経て大統領になったネルソン・マンデラ。親しみと尊敬を込めてマディバと呼ばれる彼は、それまで黒人を迫害し続けてきた白人に対して【赦し】を与えた。彼らを同じように迫害したのでは、いつまで経っても平和は訪れないからだ。
一方でラグビーチームを改革することはせず、そのままのスタイルで存続させるよう諭した。チームを誇りに思う白人を刺激しないためだ。そしてこの決断が大きな、大きな夢を実現させることになる。
鑑賞中、かなり早い段階から泣けてきた。主将のフランソワのお手伝いさんがマディバへの伝言を頼むシーン。あのシーンでなぜかウルッと来て、その後、何かある度に泣けてきた。そして、なんてことないとこでも泣けてきた。クライマックスはもちろんぼろ泣きだ。3分の2くらいは基本的に泣いていたと言ってもいい。
実話とは言え、これは映画である。南アフリカ共和国の現状を考えると、この映画だけでどうこう言うのはおかしいかもしれない。でも、あの日、あの瞬間、あの国は一つになったのだ。それだけは確実だと思う。
世界平和、世界は一つ、なんて言葉は夢想家の戯言なんかじゃなく、実現できるはずだと信じることができる、そう魂に訴える映画。
まだ2月だけど、多分、これが私の今年のベストワンだと思う。「ボカ!ヤー!」
”インビクタス 負けざる者たち” ★★★★★