久住昌之原作、谷口ジロー作画、”孤独のグルメ”。
先日の
”野武士のグルメ”の帯に『これぞ、「孤独のグルメの素」だ!』と書いてあった、その”孤独のグルメ”。
食事というのは極めて日常的なことで、毎日何度もする行為である。そんな中でたまにごちそうを食べるから印象的であり、ドラマティックなのである。
そんなドラマティックな食事をハレの食事とすれば、この漫画で描かれているのはケの食事である。ただし主人公の井之頭五郎は個人貿易商であり、独りで行動することが多いため必然的に食事も独りである。そして彼は酒を飲まず、その分食い意地が張っている。なのでケの食事も若干ドラマティックなものになりやすい。
そんなほんのちょっとだけドラマティックな独りの食事の光景が編まれている作品。
簡単に言うと、独りもんが店で出されたものをブツブツ言いながら食べる漫画である。
しかしながらこのブツブツの感じが非常にいい。と言うか、わかる。例えば第1話”東京都台東区山谷のぶた肉いためライス”で、ぶた肉いためとライス、おしんこを注文した後、とん汁を追加したものの、予想に反してぶた肉いためが豚肉入り野菜炒めではなく、ほんとに豚肉を炒めただけであった時の彼の心の呟きだ。
『うーん・・・ぶた肉ととん汁でぶたがダブってしまった』
言う。これは言う。似たようなことを絶対に言っている。今までの人生の中で幾度か言葉にしている。
こんな重箱の隅をつつくような、ほんとになんてことのない、まったくもってちょっとしたものでしかないドラマが人にはある。
井之頭五郎、彼は私であり、あなたなのだ。