フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督・脚本、”善き人のためのソナタ”。原題は”Des Leben Der Anderen”。弱冠33歳の初監督作品だそうだ。新たなる才能の出現に感嘆せざるを得ない。
1984年の東ドイツを舞台に、体制側であるシュタージによる強固な監視システムを題材に、表現の第一線に立つ芸術家の苦悩や葛藤、尊厳や自由、そして男女の愛を描く。説得力がある脚本を丁寧な演出が立体化していく。2007年のアカデミー外国語映画賞受賞も納得の佳作。
1984年、ベルリンの壁崩壊のたかだか5年前にこんな監視システムがあったことにビックリする。表現の自由もなければプライバシーの尊重もない。恐るべき世界だ。
そしてそこで起こったちょっといい話。女の気持ちは移ろいやすいけど、音楽は裏切らない、音楽は一種のパワーを持つというかマジックがある、みたいな。
『この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない。』らしいので、とりあえず今現在、国会議事堂とかパレスチナあたりにフルボリュームでベートーベンのピアノソナタ第23番”熱情”をお聴かせしたらいい思う。マジで。
と、その前に自分が聴いとけって話か。ギャフン。