山下敦弘監督、”松ヶ根乱射事件”。
同監督作品では”リアリズムの宿”の系譜。
90年代半ば、日本のある雪降る田舎町での物語。どこにでもありそうな田舎町の、どこにでもいそうな人々の、どこにでもありそうでなさそうな、閉鎖的社会だからこその底の知れない闇を描いている。
底の知れない闇。真っ暗で底が見えないにもかかわらず底への階段を一段一段下りていくかのように、闇がその深さを増すかのように、徐々に狂気があらわになっていく。
傍目にはどんなに不幸に映ろうとも、自分の状況が不幸だと思わなければ不幸ではない。自分の状況が不幸だと気付かなければ不幸ではない。そんな人は幸せだ。それは明白。
この物語はそこから一歩突っ込んだ先を描く。もし、もし自分の状況が不幸だと気付いたとしても、その状況に甘んじられるのであれば、不幸の認識がありながらも享受できるのであれば、それも幸せなのではないか、と問うている。
不幸の中にしか幸せはない。
闇の中で見える、小指の爪の先程もない極僅かな光。ほんとに見えているのか、ほんとは見えていないのにあまりの暗さに耐え切れずに脳が勝手に作り出したのか、判然としない程の微かな光。その光が実際にあるかどうかは関係ない。あると思い込めばいい。見えていると思い込めばいい。
幸せとはそんなものではないだろうか。
ちなみにエンディングテーマはボアダムズの”モレシコ”。グッチョイス。
松ヶ根乱射事件
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リアリズムの宿
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