中島哲也監督、中谷美紀主演の”嫌われ松子の一生”。
松子は不慮の死を迎えた。【禍福はあざなえる縄の如し】という言葉があるが、松子の一生は不幸と不運があざなえる縄の如しだった。
松子には【自分】がなかった。父親からの愛情の欠如、そしてその渇望がトラウマになったことが原因だ。主体性がなく、あらゆることを他人の判断に委ね、他人のせいにし、その場しのぎで生きていた。だから不幸は松子が招いたものだし、不運もしょうがなかった。
しかし松子には【自分】がないから、不幸も不運も受け入れることができた。つまり割り切ることができた。ゆえに松子は前へ進んだ。周りには目もくれず、松子だけの道をひたすら前へと。
結果、松子の人生は幸せに見えた。何かというと歌っている人生。実際は現実逃避のために歌っているのだが、その姿、没頭ぶりがそう感じさせない。哀しい歌を実に幸せそうに歌う。さも人生を謳歌しているかのように見える。
画面は常に色彩豊かだ。けばけばしく、毒々しい。嘘を饒舌でごまかすかのように。そこにある本質を覆い隠すかのように。そう、松子の人生のように。
ミュージカル仕立ての本作で鳴り響いている楽曲はいろんなジャンルのものがあるが、結局は全て哀歌に他ならない。
嫌われ松子の一生 通常版
中谷美紀 / / アミューズソフトエンタテインメント
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