私の父はコックでした。ホテルで働いていたときはパティシエだったそうです。私の今の仕事を考えますと、その血は濃く私の中に流れているみたいです。
先日いらしたお客様、その方も結構特異な方なのですが、おっしゃいますにその父上はさらに特異な方らしいのです。
父上の職業を一言で言うと、”宝探し”だそうです。徳川埋蔵金あたりで火がついたらしいのですが、それ以降の十数年は目的の宝はいろいろらしいのですが、常に追い求めているそうです。
感心なのは、宝探しにかかる資金をちゃんと作ってから旅立っている点です。と、ここで気付くのは、「その資金をつくった事業をずっと続ければかなりの財を成すのでは?」ということです。
しかしそれは私のように平々凡々な人間の考え。父上が見据えているのはそんなチンケな成功ではないらしいのです。
あるときは徳川埋蔵金を求めて赤城山へ、あるときは沈没船の宝を求めて太平洋へ、あるときは盗まれた3億円を求めて北海道へ。
なんと奔放な、なんと無鉄砲な、なんと夢見がちな、なんと少年のような、なんと素敵な父上なんでしょう。などと言えるのも所詮他人だからです。これがわが父だったら、ほんと頭を抱えますね。
そのお客様もこうして他人にしゃべれるようになったのは、ここ2年くらいだそうです。納得。それまでは自営業ということでお茶を濁していたそうです。
みなさんいろいろありますね。そんなお話を聞けるのもこの仕事の醍醐味です。