米澤穂信著、"儚い羊たちの祝宴"。
上紅丹地方で大きな力を持つ丹山家に引き取られた孤児の村里夕日。丹沢家の娘である吹子のお付きとして雇われ、共に成長した。そして夕日は今、誰にも見せられない恐ろしい内容の手記を記している・・・。という始まりの"身内に不幸がありまして"を含む5編の短編小説集。
5編全てに夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」が出てくる。強固な縦軸みたいなものではなく、ふんわり繋がっている横軸みたいな存在として。だから物語としての関係性は希薄だけど、時代設定が同じで、会の特徴から主人公たちの環境が似通っているということが理解できる。
初めての米澤穂信。"満願"が読みたかったんだけどまだ文庫化されていなかった。なので調べてみたら思っていたより文庫が多くてどれにしようか迷った。しかも青春強め系とミステリー強め系の2つの軸があるっぽくて、はてさてどうしたもんだろうかとなった。
ネットでいろいろ情報を得ようにもネタバレに遭遇してしまう確率が高い。なのでこんな時はもうアナログな手法が手っ取り早いと、本屋さんで店員さんに訊いてみた。
そしたらやっぱり最初に言われた、青春小説っぽいのとミステリーとどっちがいいかって。そもそも"満願"が読みたかったのでミステリーと答えたら、新潮文庫の3冊を薦められた。"ボトルネック"、"リカーシブル"、"儚い羊たちの祝宴"。タイトルと装丁でこれにした。
5編どれもこれも抑えたトーンで粛々と物語は進む。そこに明るさや華やかさは微塵もない。全て暗く黒く地味。そして残酷。
読み終えて嫌な気分になる。それも最後の1行とかで。なんかもう怖さと嫌さで逆に笑えてくる。
それでも読み進めたくなる、次の話も読みたくなるのは不思議。自分の中にある残酷な部分を刺激されたのだろうか。
わたしは