渡辺正清著、"評伝 長沢鼎 カリフォルニア・ワインに生きた薩摩の士"。
幕末に薩摩の武家に生まれた磯長彦輔は13歳にして薩摩留学生の1人としてロンドンへ渡る。その際、長沢鼎と変名し、後に遠きカリフォルニアの地にブドウ畑を拓いたワイン作りの先駆者としてこの名を残すことになる。
1年半前にいただいた本をやっと読んだ。
名前と鹿児島出身ってこととカリフォルニア・ワインの人、くらいの認識しかなかった長沢鼎。
けれどこの評伝を読んで、その波瀾万丈でありながらも開拓者として芯の通ったまっすぐな人生の歩みを知り、同じ薩摩人として誇りに思うと同時に、今までほとんど何も知らなかった自分を恥ずかしく思った。
吉川英治とか司馬遼太郎が小説にしても、NHKの大河ドラマでやってもいいくらいのダイナミックでドラマチックな人生。
13歳で海を渡り、ロンドンからアバディーン、アバディーンからロンドンに戻って、今度はニューヨーク州のエリー湖畔。そしてそこからカリフォルニアへ。
再び日本の地を踏んだのは45歳の時。この時には既にカリフォルニアに広大なブドウ園を所有し、多くの人を雇い、大量のワインを製造し、米国内だけではなくヨーロッパにも販路を持ち、当然ヨーローッパにおいてもナガサワ・ワインとしてのブランド力を有している。つまりカリフォルニアにおける名士である。日本人なのにである。
スゴいとしか言いようがない。何をどうしたって到底マネできない。感嘆するばかりである。
もっともっともっと薩摩の偉人として評価されていいし、鹿児島の人たちに知って欲しいと切に思った。