ナ・ホンジン監督・脚本、”チェイサー”。ディカプリオによるハリウッドでのリメイクが決定しているらしい。
”闇の子供たち”、”チェンジリング”と同様、観てる最中に「えっ!?」&どよーん・・・となること必至の作品。
しかしながらこのスリリングな展開は筆舌に尽くしがたい。一般的な起承転結のバランスから明らかに逸脱しており、観客の予想を裏切りまくる。突拍子もないということではない。リズムが違うのだ。物語に整合性はあるものの、我々が慣れている展開とはリズムが違うために、観ているこちらを驚かせ不安感を煽る。そしてこの映画の世界に引き込む。結果、我々も主人公であるジュンホと一緒になって何者かを追いかけるのだ。
主人公のジュンホは元刑事で今は非合法のデリヘルを経営している。最近相次いで女の子が消えており、不審に思ったジュンホは帳簿から、彼女らが最後に接したのは同一の携帯番号の人物だということに気付く。そしてその番号の人物の元には、たった今ミジンを向かわせたところだった・・・。
怨恨、劣情、憤怒、憎悪、義憤、なんでもいい。目に見える理由があれば、悲しいながらも納得できる。しかし、である。
闇は存在するのだ。人の心に闇は存在するのだ。見えず、理解できず、意味が分からず、もしかしたら意味なんてなく、もしかしたら何もないかもしれない、それが、闇。理不尽と不条理と無理解の混沌。闇。
闇を飼いならすことなんて誰しもできないんだろう。少なくとも法律と倫理と道徳に則った上では・・・。哀しいことだが、絶望するしかない。
”チェイサー” ★★★★★
ちなみに私は絶対にシリアルキラーにはならないらしい。劇中の精神科医の言を借りれば、である。ふふ。